戦国策の一番初めに出てくる話です。
秦が兵を起こし周に至り、(周が殷から得た)九鼎をよこせと要求しました。鼎は三本足の鉄のかまです。鼎は王権の象徴ですが、これが九つセットだったのでしょうか。王権の象徴だから入手したかったのはわかりますが、書かれている限りはいきなり兵を興して九鼎を寄こせというのですからかなり乱暴な話です。周君が顔率に相談すると、斉に救援を求めるようにします、と言います。
ここですでに驚きです。そんな話をして斉が顔率の話を聞いてくれる保証はあるのでしょうか?古代中国ですから説得失敗で戻ったら死刑でもおかしくありません。しかも顔率の斉へ行っての説得は、次の通りです。「秦が無道で周に九鼎を要求しています。しかし周としては対策を立て尽くしたあげく秦へやるくらいならお国(斉)ものしてしまう方がまし、と結論しました。(斉にとっても)危ない国を助けるのは名誉なこと、九鼎を手に入れることは巨利です。」
つまり助けてくれたらそちら(斉)に九鼎を差し出すというのです。
これを聞いた斉王は喜び五万の兵を繰り出して周を救援し、秦は引き揚げます。
そうなると今度は九鼎を斉に渡す必要があります。ここで周君はまた憂慮したとあります。そもそも秦を追い払ってくれるならおたく(斉)へ九鼎を上げる、などという馬鹿な約束に周君は賛成したのでしょうか?だとするなら周君もあんまり利口な人では見えないです。
そこで顔率はまた斉に行き斉王と話します。問答を簡単に書くと以下の流れです。突っ込みどころ満載です。
顔率「九鼎を献上しますが、どの道を使いますか。」
斉王「梁を通らせてもらう。」
顔率「梁の君臣は前から九鼎を狙っていて奪おうと少海(地名)のほとりでことを企んでいます。九鼎は一度梁へはいったらもう出てこないでしょう。」
斉王「なら楚を通らせてもらおう。」
顔率「楚の君臣も九鼎を狙っています。葉庭(葉県の宮廷)なかで(奪おうと)ことを企んでいます。九鼎は一度楚に入ったらもう出てきますまい。」
斉王「どの道で運んだらよいだろう」(斉王はなぜこんなことを今更聞くのかと思います。)
顔「そこが問題です。周が殷から九鼎を得た時、一つの鼎あたり九万人かけて運びました。合計で81万人かかります。運搬そのものが容易でありません。しかもたとえ人数をそろえてもどの道からだすかを気にしておりました。」
斉王「なんども来たくせにそれでは初めから渡すつもりがなかったのではないか。」
顔「欺く気などありません。速やかにどこから鼎を持ち出すかをお決め下さい。こちらでは鼎の座を遷して命をお待ちします。」
これで斉王は鼎をあきらめたとあります。こんな子供だましの問答でよく顔率が斉王に殺されなかったものと呆れるばかりです。
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