2013年11月2日土曜日

三国志演義、三国志 蜀書 劉彭廖李劉魏楊伝第十 魏延(1)

魏延は三国志演義では悪役の裏切り者になっています。彼自身に落ち度がなかったとは言えないのですが、気の毒なところもあります。

彼の三国志演義での登場は第五十三回で、関羽と戦っている勇将黄忠を裏切り者と誤解した韓玄が、黄忠を処刑しようとしたところを黄忠を救い、韓玄を斬って関羽に降伏する者としてです。

黄忠は韓玄を斬るのをとどめようとしたのですが間に合いませんでした。後に黄忠は劉備に願い出て韓玄を葬ります。
ここで諸葛亮がきついことを言って魏延を処刑しようとします。即ち
食其祿而殺其主、是不忠也。居其土而獻其地、是不義也。吾觀魏延腦後有反骨、久後必反、故先斬之、以絕禍根。
です。
“碌を食らいながら、その主人を殺すのは不忠、主人の地に住みながら、その地を献じるのは不義である。自分が魏延を見るに脳の後ろに反骨があり、後に必ず謀反をする。故に先ずこれを斬って禍を絶つのだ。”
と言います。これが諸葛亮の死後の魏延の謀反に繋がって行く伏線です。しかし、現実に人に向かって先にこんなことを言ってしまって、そのあとでこの人を普通に使うなんて難しいですね。魏延とても魏か呉へ行くことを考えることでしょう。

正史の魏延伝ではこんな話は出てきません。魏延伝の冒頭は

魏延、字文長、義陽人也。以部曲隨先主入蜀、數有戰功、遷牙門將軍。」
です。井波さんの訳では

“魏延は字は文長といい、義陽郡の人である。一隊長として先主に随行して蜀に入り、たびたび戦功を立てたので牙門将軍に昇進した。”

です。

彼は特別誰かを裏切ったとかではなく普通に劉備に仕えて成果を挙げて順調に出世したようです。そしてそのあとすぐに続く文に於いて抜擢人事のことが書かれています。即ち

先主爲漢中王、遷治成都、當得重將以鎭漢川。衆論以爲必在張飛、飛亦以心自許。先主乃拔延、爲督漢中鎭遠將軍、領漢中太守、一軍盡驚

井波さんの訳では、

“先主は漢中王になると、政庁を成都に移したので、漢川のおさえとして重要な将軍をもちいる必要があった。人々の評判では必ず張飛が任用されるだろうといわれ、張飛自身もまた内心そうだろうと自認していた。先主は意外にも魏延を抜擢し、督漢中・鎭遠將軍に任命し、漢中太守を兼務させたので、一軍みな驚いた。”

ということです。

劉備は魏延を高くかっていたことになります。この抜擢人事に諸葛亮が何か言ったかどうかは伝わりません。黄忠を関羽と同列にする時は関羽が不平を抱くといけない、とさえ心配したのにです。いずれ裏切る人間と思っていたならば、その栄進について何か言ってもよさそうなものです。
魏延はその後さらに手柄を立て南鄭侯まで昇進するのです。有能な将軍が上にみとめられて順調に出世している訳です。






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